管理薬剤師 速水浩子さん
―まずは自己紹介をお願いします。
一宮市本町にあるハヤミ薬局で管理薬剤師を務めている速水浩子(はやみ ひろこ)です。岐阜市出身で、小さい頃は柳ケ瀬のすぐそばに住んでいました。たまたま歩いて行ける距離に岐阜薬科大学があり、そちらに進学して薬剤師の勉強をした後、昭和40年に嫁ぎ先である一宮に引っ越してきました。
一宮で暮らすようになって58年。今年で80歳になりました。今でも薬局の店頭に立って昔から足を運んでくださる常連のお客さんの接客などを担当しています。もともとお客さんとしゃべるのが大好きですから、私にぴったりの天職だと思っています。
―お店の成り立ちや想いを教えてください。
もともとは今の場所でお酒造りをしていました。創業は明治32年。『桜駒』『菊鷹』という銘柄のお酒を製造販売していましたが、ビールやウイスキーなどが広まり、若い人たちが日本酒をあまり飲まなくなるのを見て、赤字続きの事業に見切りをつけて薬局一本に絞りました。
薬局を始めたのは昭和12年のこと。名古屋からこちらに養子に来た義父の実家が薬種商問屋だったことから、酒屋の軒先でこぢんまりと売り出したのが始まりです。昭和40年代に酒造りを辞めてからは、市販のお薬を大量に仕入れて販売するようになりました。当初は近くに薬局がなかったこともあり、仕入れたらどんどん売れる景気のいい時期が続きました。
―お店で速水さんが愛しているポイントはありますか?
86年の歴史がある薬局ですから、古くから通ってくださる常連さんが多いのが特長です。稲沢あたりから買いに来てくださる方もいて、「ほかにないお薬でもハヤミ薬局なら手に入るかも」とお見えになる方もいます。そのため、常連の方がお使いなられているお薬はできるだけ取り揃えるようにしています。
市販薬以外には、化粧品や雑貨のコーナーも充実させています。化粧品はものすごく変遷が激しくて、どんどんと新しい商品が出てきます。それでもうちでは、昔から購入してくれている方が多いので、主に揃えているのは定番の商品です。「昔から変わらないものがいいわ」と買ってくださるお客さんが多いですね。
―速水さんがお店でがんばっていることは何ですか?
お客様からご要望があれば、どんなお薬でも取り寄せるようにしています。若い人たちはネットで探せばいいかもしれませんが、お年寄りだとなかなか簡単にはいきません。うまく使いこなせない人もたくさんいます。そんな方たちのために何とか頑張ってお探しするようにしています。メーカーが合併したり、生産中止になったりして手に入らないものも多くなりましたが、それでも何とか取り寄せて喜んでもらえると嬉しいですからね。
うちは古くから市販薬を扱ってきましたから、新しいドラッグストアや調剤薬局さんでは分からないようなお薬のこともよく知っています。「この薬がよく効くんだよ」なんて懐かしそうに話される方もいますので、そういう声には少しでもお応えしていきたいです。
―中心市街地で速水さんがお好きなお店やスポットは?
うちの目の前に、昔はカネスエさんの1号店があったんです。こちらが発祥の地で、ご近所ということで仲良くさせていただきました。ものすごく勉強熱心で、いち早くレジを取り入れて大繁盛されていたのを覚えています。うちは本当に目の前だったので、冷蔵庫がいらないくらいでしたよ。
近くでお気に入りのお店は「キッチン林」さんです。以前はランチ営業をされていたのでよく行っていましたが、残念ながら夜のみの営業になってしまい、お酒が飲めないこともあって最近はご無沙汰しています。またぜひ行きたいですね。
―最後に、お店または速水さんの夢や未来像があれば教えてください。
もう80歳になりましたから、引き際を考えることもあります。「奥さん、何しにお店におるの?」なんて言われそうですもんね。でも、何とか動けるうちは頑張りたいです。いつものお客さんとおしゃべりするのを楽しみに、できる限りお店に立ち続けたいと思います。少しでも地域の皆様が快適で健やかな日々が送れる様、お役に立てればと願っております。
編集後記
創業明治32年。以前はこの場所で酒蔵を営んでいたというお話には正直驚きました。常連のお客様のため、他では見かけないようなお薬もできるだけ取り揃えているという速水さん。これからも末永く“看板娘”として頑張っていただきたいと思います。ぜひ皆さんもすてきな笑顔を求めて立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
店舗情報
くすり・化粧品販売 処方箋調剤
月〜土 9:30〜19:00
日・祭日 10:00〜19:00
定休日:原則なし、但し祭日・月曜が重なった時は休日
一宮市本町3-9-13
Tel:0586-72-2291