かけつぎ職人/営業 岡野晃兵さん(左から2番目)
―まずは自己紹介をお願いします。
岡野晃兵(おかの こうへい)です。「紬かけつぎ店」でかけつぎ職人と営業を担当しています。
前職では営業をしていましたが、テレビでかけつぎの技術を見て「すごいな」と思い、かけつぎの修行を始めました。手に職をつけたかったし、驚かれるような仕事をしてみたかった。
それがきっかけでかけつぎの修行を始め、修行していた職場の先輩と2人で独立しました。
「かけつぎ」は、服にできたキズや穴などをふさぎ、元の状態に近い形に修復すること。
もともと服は好きでしたが、「かけつぎ」は知りませんでした。私が知らなかったのなら、知らない人は多いはず。どんなにすごい技術でも知られないと意味がないので、もっとたくさんの方に知ってもらいたいです。
―お店の成り立ちや想いを教えてください。
「紬かけつぎ店」は2019年の4月オープンです。繊維の街ですし、かけつぎを必要とする業者さんも近くにありますし…全く関係のない場所でオープンするよりも需要がありそうだと思ったので、一宮でオープンしました。今は、9割くらいが業者さんからの依頼です。お店も構えているので、少しずつ個人のお客様も増えたらいいなと思っています。
―お店で岡野さんが愛しているポイントはありますか?
「紬かけつぎ店」を選んでいただけること。かけつぎを終えたものを見て、驚いて、感動して、喜んでいただけるところだと思います。中には、原価よりも修理代のほうが高くつくようなご依頼もありますが…それでもご依頼いただけるのがうれしいです。
―岡野さんがお店でがんばっていることは何ですか?
技術・営業どちらの面も自信はありますが…
技術的には、他店で断られるような例も引き受けていること。ご依頼をお断りすることは少ないですね。せっかくご相談いただいたのだから、断らず解決したいです。
全国的にもかけつぎ店の数は減っていますし…かけつぎを知らない人も多いから、ちゃんと発信していきたいですね。直接、かけつぎを知っていただきたい。イベントを開催したり、メディア露出をしたりして、自分たちが動いていきたいです。
―コロナ禍において、お店で新しく始めたことはありますか?
2020年はホームページをリニューアルしましたが、遠方への営業はあまりできませんでした。2021年も遠方への営業は難しいかもしれないので、SNSなどWEBでの発信をがんばっていきたいです。何かとコラボレーションしての発信もできたらいいですね。
―話は変わりますが、中心市街地でご自身が好きなお店やスポットなどはありますか?
「紬かけつぎ店」は真清田神社の目の前にあります。私たち以上に、お客様に喜んでいただいていますね。なんとなく縁起もよさそうで、いいところにあるお店だね、と。確かに、見守られている感じはします。
―最後に、お店又は岡野さんの夢や未来像があれば教えてください。
現在は2人の職人でやっていますが、2021年4月から20代の職人がひとり増える予定です。
職人はどんどん高齢化していて、70~80代の人がほとんど。後を担う世代の職人が少ないのが現状です。でも、かけつぎの技術は日本が誇れるもの。需要もある業種ですので、職人を育て、業界全体を盛り上げたいですね。自分たちだけで終わるのではなく、次の世代へ。若い人が職人になりたいと思ってもらえるよう、私たちもがんばりたいです。
編集後記
カジヤマシオリ/2021.2.10
取材前にかけつぎのサンプルを見ましたが、どこに傷があったのかわからないくらい、綺麗に修復してありました。本当に、日本の誇るすばらしい技術だと思います。岡野さんのような若い方が発信しつづけ、かけつぎという仕事や業界自体が盛り上がるといいですね。