株式会社のいり

街のひと

代表取締役社長 野杁晃充さん

―まずは自己紹介をお願いします。

一宮市浅野に本社を置く株式会社のいりの代表取締役社長・野杁晃充(のいりてるみつ)です。本社から徒歩3分くらいの場所にある実家で育ち、中学・高校は名古屋市内にある男子校に進学。のびのびとした青春時代を過ごしました。

家業を意識するようになったのは、父に誘われてアルバイトを始めた高校時代。お亡くなりになった方のご自宅に祭壇を運ぶ肉体労働を経験したのがきっかけです。実は、父からは一度も後を継ぐように言われたことはありませんが、今思えばこの頃のアルバイトは、将来を見据えた父なりの英才教育だったのかもしれませんね。

大学卒業後は外資系コンサルティング会社に就職。その後、アメリカの大学で「葬祭学」を専門的に学び、29歳でのいりに入社しました。そして、創業100周年の節目を迎えたタイミングで社長に就任しています。当時の父はまだ65歳。世間に比べるとかなり早い社長交代だったと思いますが、35歳の私に全てを託してくれた父にはとても感謝しています。

―会社の成り立ちや想いを教えてください。

大正元年(1912)に「野杁商店」を設立したのが始まりです。その当時は、お祭りや葬儀などで使われる道具を作るのが主な仕事で、現在のように葬儀の司会や会場装飾を手がけるようになったのは戦後のこと。地域の誰かがお亡くなりになれば、みんなで送り出す。そんな当たり前の文化が少しずつ変化していき、私たちのような民間業者が増えていきました。

平成に入る頃になると、一宮市内で葬儀ホールを相次ぎ開業しました。2000年代以降は東京を中心に家族葬が主流となり、一宮市でもこのスタイルが浸透してきています。私たちが手掛ける葬儀も、今では「家族のみ」を希望される方が全体の8割近くになっています。

―会社で野杁さんが愛しているポイントはありますか?

ご遺体に対する尊厳をとても大事にしている点です。父からは「葬儀会社を継ぐのであれば、最も意識しなければいけないのは、ご遺体をきれいかつ丁寧に扱うことだ」と言われ続けてきました。

のいりを継ぐ意思を固めた後、私はアメリカの大学で「エンバーミング」の専門技術を学びました。日本語に訳すと「遺体衛生保全」となりますが、血管から保存溶液を入れてご遺体の腐敗を止めたり、感染症などの二次感染のリスクを無くしたりするほか、がんなどで痩せた方、事故などで亡くなられた方のご遺体をきれいに修復するための技術です。大学で2年間学んだ後、現地で実務経験を積んで国家資格を取得。そして帰国後の2008年、のいり内に「エンバーミングセンター」を開設しました。

葬儀が終わり、火葬場に向かう最後のお別れのタイミングで、良い思い出を残したい。そんな想いから始めた「エンバーミング」ですが、今では全体の6~7割の方がご利用になるなど、ご遺族の方からとても好評をいただいています。

―野杁さんが会社でがんばっていることは何ですか?

最近は、本社の植栽の水やりでしょうかね。特に夏の時期は大変です(笑)。父が社長を務めていた時代は、「ホールに植栽は一切植えない」というがポリシーでした。ただ、一宮市は、東京や名古屋に比べるとかなりの田舎にも関わらず、市内に緑が少ないと感じていました。そこで、2021年7月に新本社へと移転したタイミングで、オフィス内から見られる外構部分にたくさんの緑を配置しようと決めたのです。

少しでも皆さんの憩いの場となり、癒しのひと時を演出できればと思い、これからも新たな葬儀会館を作る際はできる限り緑を取り入れていきたいと思っています。

―中心市街地で野杁さんがお好きなお店やスポットは?

一宮市の商店街でいえば、昔から通い続けている「寿司友」さんが大好きですね。“寿司”とありますが、昔ながらの趣を残したウナギ屋さんで、亡くなった祖父母の家に泊まりに行くと、よく食べさせてもらいました。

子どもの頃からの思い出の味は「うなぎまぶし」。ごはんのうえに食べやすく刻まれたウナギが盛られたどんぶりで、手ごろな値段で味わえるのもうれしいところです。

―最後に、会社または野杁さんの夢や未来像があれば教えてください。

私たちの会社は、規模拡大を目指しているわけではありません。「地元の人たちから愛される、いざという時に頼りにされるローカルブランド」を目指すことが大事だと思っています。

2040年頃には、お亡くなりになる方の数がピークを迎えると言われており、その後はどんどんと減少していく。日本の人口構造が大きく変わる中で、お客様から必要とされるものを考え、ご提供していくことがますます大事になっていくはずです。「のいりさんがいてよかった」と思っていただける、地域に根差したオンリーワンの会社にしていきたいですね。

編集後記

100年以上の歴史を刻んできた家業を受け継ぎ、「一宮市をより良くしていきたい」と奮闘を続ける野杁社長の想いがひしひしと伝わってくるインタビューでした。2008年から開始した「エンバーミング」をはじめ、最先端の技術も取り込みながら発展を続ける「のいり」さん。地元に「安心してお任せできる葬儀会社」があるありがたさを、改めて感じた取材でした。

店舗情報

葬儀を中心とした総合サービス業

一宮市浅野字大西裏38

Tel:0586-77-1255

https://noiri.co.jp/

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